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作家専用

美術作家がSNSやオンライン販売に力を入れても売上に伸び悩む理由と解説

オンライン販売サイトが最近増えてきてますね。

作家さんの中には登録したはいいけど作品が売れない。SNSを強化してるけど作品の購入に直結しない。と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。


今回はそんな作家の皆さんに向けて伸び悩む理由について現代の美術市場の状況を踏まえて解説し、今後の皆さんの活動の指針の1要素となるよう記事を書いてみました。


結論のみ知りたい方は最下部に総括を入れておりますのでその部分だけでも見ていただければと思います。



冒頭でもお伝えしたように、最近ではオンライン販売サイトが様々展開され、作品を販売する場が増えて便利な世の中になってきています。 


instagramやtwitter、tumblrなどのSNSを使えば海外を含めた美術愛好家との繋がりを簡単に持つことができるようになりました。


しかし、フォロワーを増やしても、オンライン販売サイトに作品を登録しても作品が売れないのは愛好家が「そこにいない」からなのかもしれません。



販売種別市場規模

当記事で使用しているグラフは文化庁が毎年刊行している「日本のアート産業に関する市場レポート」から抜粋した内容です。



2019年の国内の市場規模は2270億円

そのうちオンライン販売は192億円 

国内市場の約8%がオンライン販売で購入






2020年の国内の市場規模は1,929億円

そのうちオンライン販売サイトは107億円

約5%がオンライン販売で購入





2021年の市場規模は1868億円

そのうちオンライン販売サイトは116億円

約6%がオンライン販売で購入





2019年は市場分析を初めて最大の売上を記録した年で、市場は2200億円を超えました。

それでもネットからの購入は8%程度。


その後コロナウイルスの影響による行動制限により美術市場全体が落ち込みました。


外出自粛や展覧会の中止ないし延期によるオンライン販売の需要の高まりや、企業の注力によりオンライン販売の売り上げが高まることが期待されましたが、オンライン販売はコロナ以降も伸びることはありませんでした。



愛好家の好む販売元

過去1年間に美術品を購入した93名にアンケートを取り(複数回答あり)、17名(約18%)はネット購入に関心があると答えています。

ネットからの購入者は意外にも多いという印象を受けます。


しかし、これはギャラリーやオークションハウスが運営するオンライン販売も含んでいるからです。ギャラリーや、オークションハウスは顧客からの信頼をすでに獲得していることや、そうした場で取引されている作品はすでに有名な作家でありクオリティが担保されているためです。


「オンライン販売が伸びている」という話をよく聞きますが、実はオンライン販売はそこまで活発に行われておらず、むしろコロナ前より落ち込んでいるのが現状です。


コロナ禍、各社のオンライン販売の強化というかなり強力な後押しがあっても市場全体のオンライン販売の割合が全体の10%未満なのは美術品をネット販売で購入することに抵抗のある人が大多数ということはいうまでもありません。


美術品はオフラインでの購入を好む人が多いと言えます。

画面上の作品と実物とでは画材の質感や、サイズ感、色彩から受ける印象が大きく異なるため、できる限り飾ることを前提に作品の雰囲気を見たいものですよね。

それを考えるとオフラインが好まれるのは必然と言えば必然ですね。



美術品の購入理由


作品の購入理由に「たまたま気に入った作品を見つけたから」という回答が非常に多く、作家を知ったうえで作品を購入している人は意外にも少ないことが伺えます。


「たまたま気に入った作品を見つけたから」という方は潜在的な作家の関心層(以下関心層)だった方です。

「知れたから購入したのであり、知らなければ購入しなかった・できなかった層」と言えます。

彼らは作品を購入するほど作家に共感している。だけどSNSで情報をキャッチできないから「たまたま作品を購入する」という形になります。



SNSは情報が溢れすぎている

では何故SNSを日々育てている作家と、関心層が出会えないのか。

それはSNSは情報が溢れすぎているからです。


Instagramのアカウント数は日本国内では3300万(※1)。

そのうち投稿をしているのは17%561万人( ※2)。

仮にその中の10%(56.1万人)が美術関係者とした場合、1週間に1回ペースで投稿すると1日あたり8万投稿されます。

例として1週間に1回ペースであり、恐らくこれ以上に多くの投稿が1日にされています。


美術系の投稿だけでも1日約8万投稿。さらに作家の皆さんが埋もれないように頑張れば頑張るほど関心層と作家の距離はある意味遠くなってしまいます。

それくらいに情報で溢れているのが現状です。


参考:



オフライン活動を補うためのオンライン活動

ではこれから何に力を入れていけばいいのか。

オフラインを補完するためにオンライン活動と考えて活動することが好ましいと思われます。

「美術品の購入者はオフラインに集中している。」と、愛好家の好む販売元の章で書いたように、オンライン販売サイトが充実しても購入者の9割はオフラインな場で購入します。

となるとオンライン販売サイトで安定的に作品を購入してもらうためには下積みとしてオフラインでの活動は必ず必要です。


一定数の顧客を獲得することができればオンライン販売も見込めるかもしれませんが、実績が少ないうちはオフラインでの活動に力をかけ、愛好家との接点を多く作ることが重要です。


実績の少ないうちはできる限り展覧会を開き社会との繋がりを積極的に作ることが作家業の最大の近道になるかもしれません。



総括

・オンライン販売が伸びているようでも実際には市場全体の1割以下。展覧会やアートフェア で購入する方が9割以上。

・愛好家の大半はSNSで作家を知るより展覧会場などの現地でたまたま知って作品を購入する人が多い。

・既存のSNSは情報が溢れ、愛好家が作家を見つけ出すことは稀。

・オンラインの活動を励むよりオフラインでの活動に力を入れる方が効率的。


当サイトではSNSでの情報取集のし辛さを改善するために展覧会情報を集約し、作家と美術愛好家が繋がりやすい環境を築くための整備を進めています。


展覧会情報を集約したFOUND ARTの特徴


当サイトには美術館レベルの大規模な展覧会の掲載は行っておらず、レンタルギャラリーや、コマーシャルギャラリーなどの比較的小規模な展覧会をメインに掲載し、現役作家に関心の高い層に情報を訴求することができます。


展覧会情報の掲載のみならず、出品作家の情報も併せて閲覧できるようにすることでより関心高く展覧会に来訪できる仕組みにしています。


また、検索機能も地域別、出品ジャンル(絵画・彫刻・写真・インスタレーションなど)、展覧会形態、開催状況を検索できるようにし、「美術品がほしいから週末に東京で開催される現役作家の油絵の展覧会に行きたい!」という具体的な希望にも応えられるようにしています。


是非FOUND ARTに登録してオフラインの繋がりを見つけてください。

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