ストーカーと聞くと今まで経験のない方にとっては他人事や、美術界内では存在しないもののように思えるかもしれません。しかし美術界にも根深くストーカー問題はあり、いつその時が来るかはわからないものです。
そんなストーカー問題の実例と対策について説明し、対策を講じてもらえればと思います。
ギャラリーストーカーとは
ギャラリーストーカーは一般的なストーカーとは若干異なる性質があります。
一般的なストーカーは「町中で見かけて」「元交際相手が転じて」というような加害者からの一方的な強い認識から始まり、利害関係がない分、被害者は加害者を拒否することもできます。
しかしギャラリーストーカーの場合、ストーカーとなる加害者が購入者や、キュレーター、学芸員など立場的に加害側を拒否し辛いことがあり非常に厄介な存在と言えます。
作品を購入しない方であれば強く出ることもできますが、作品を購入されれば一顧客として大切に対応しなければならないことや、美術界の関係者である場合、通報することで作家人生に影響が出るかもしれないと考え、被害を申告できないこともあり非常に深刻な問題です。
ギャラリーにストーカーが表れる原因
ギャラリーは環境上お客様が突如としてストーカー化しやすい場所です。
作家である被害者は作品を購入されれば無意識に「売る側は弱く、買う側が強い」という立場的な錯覚を覚え、積極的に加害者を拒否できません。
また、コレクターである「無自覚な加害者」は作品の最大の理解者と自任し、歪で一方的な好意を作家に押しつけ執着します。
他にキュレーターや、学芸員、有名作家など美術界に大きな影響力を与えるプレイヤーは立場を使って被害者が拒否し辛い環境を作っていきます。
こうした要因により「好意を押し付ける加害者」と「積極的に拒否できない被害者」という従属関係に近い形が作られることが原因です。
実例
①作品を購入されたお客様に「後日食事に行こう。」と誘われる。
②展覧会終わりに会場外で声をかけられる。
③連日展覧会に現れしつこく話しかけてくる。
④SNSでしつこく絡んでくる。
これらすべてがストーカー行為ではありませんが、作家さんが不安を覚えればストーカーと言えます。
ただ実害があれば警察も対応してくれますが、実害のない場合は警察も取り合ってくれない可能性もあるので被害を受ける前に自衛として対策を講じる必要があります。
対策例
下記が必ずしも有効な断り文句ではないのであくまで参考例として考えてください。
①作品を購入されたお客様に「食事に行こう。」と誘われる。
→自衛のための方便
作品を購入した方から「食事に行こう」と誘われることがあるかもしれません。購入者に言われると断りたくてもうまく断る言葉がない。という方に穏便に済ませるための断り文句です。
加害者:展覧会終わりに作品のことをもっと知りたいので食事にいきませんか?
被害者:「お気持ちは嬉しいのですが、所属している美術団体(もしくは学校、ギャラリー)から顧客との食事は控えるよう言われているのでいけません。」
食事の何が悪いの?
「所属団体(もしくは学校や、所属ギャラリー)から、「他の顧客様からの信頼を欠くことになりかねないし、所属団体としての信頼も失いかねない」と規則として徹底されています。もし規則を破った場合団体から脱退させられる(学校の場合単位のはく奪に繋がる)ため食事にはいけません。」
こちらから代表に話を通しておくので問題ないよ。
「代表は問題ないかもしれませんが、所属作家に迷惑がかからないとも言えないので食事には行けません。お気持ちだけ受け取っておきます。」
POINT
出来る限り穏便に解決させることが得策です。
「団体の意向により断らざるを得ない」と、断る理由はあくまで団体の意向ということを相手に理解してもらいましょう。
「通報する。」などと言って相手を刺激した場合、ストーカー行為がエスカレートする可能性もあり穏便に解決することが重要です。
ストーカー問題は対処が難しいため被害にあって1人で悩みこんでしまうこともあります。そうした自体にならないよう出来る限り自衛できるようにしましょう。
お客様がストーカーになるのは事故のようなものです。注意していても起こる時は起こってしまいます。事故が起こっても変な事態にならないように知識として備えておくことは重要です。
②展覧会終わりに会場外で声をかけられる。
③連日展覧会に現れしつこく話しかけてくる。
→お客様と極力2人にならない。
コマーシャルギャラリーであればギャラリストが傍にいることで加害者は危険な言動は控えるでしょう。
しかし、レンタルギャラリーの場合、会場にお客様と2人きりになることもあります。なるべく友人や知人に常駐してもらったり、定期的に誰かが訪れてくれる環境を整えておくことが重要です。
また、レンタルギャラリーの場合、オーナーやスタッフが近くにいることもあります。もしもの場合に備えてギャラリー関係者の連絡先を聞いておき、トラブルになりそうであれば助けを求めることも大事です。
④SNSでしつこく絡んでくる。
→返信の質の度合いを下げる。最悪ブロックする。
加害者から投稿内容に執拗にコメントやDMを飛ばしてくることがあります。
最初の内は一お客様としてコメントに感謝を示すことが好ましいです。しかし、お客様からのコメントやDMがあまりにしつこかったりプライベートなことに触れてくる場合は、「お客様でありプライベートな関係性ではない。」旨のことを伝えましょう。
それでも執拗に連絡が来るのなら「これ以上連絡があると仕事に支障をきたすので、連絡を控えてほしい。継続する場合はブロックせざるを得ない。」と伝えなるべく穏便に解決することが望ましいです。
ブロックするのは不安もあると思います。しかし、作家の生活のことを考慮しないお客様と継続して繋がるのはデメリットの方が大きいはずです。
お客様とのトラブルはなるべく避けたいところではありますが、文中に書いたように、ストーカー被害にあうのは交通事故のようなもので、ドライブをしていればいつ事故にあうのかわからないのです。
不測の事態にならないよう、できる限り穏便に解決することを心がけてください。
総括
ギャラリーストーカーは対応が非常に難しい問題です。
作家業をやっていくうえで誰しもがそのリスクがあります。できる限り対策を講じて作家業に支障のないよう解決してください。
また、1人で悩まず周囲に相談したり、公的機関の窓口に相談して重大な事態にならないように気をつけましょう。
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